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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 だから──いっそそのまま忘れ、温い泥の中で死なせてくれればよかったのに。
 更に時が経って碑も苔と草に覆われてしまった頃、なまじ己が神であったばっかりに、次第に違うものを引き寄せてしまうようになってしまった。
 『……自ら水に、沈む者が出始めたのです』
「自ら……?」
それに、日嗣は眉を寄せ訝し気な面持ちを作る。どこかで聞いた。つい、今しがた……それを語った者が、どこかにいた。
『今でも分からぬのです……己に絶望し、何も持たない人間が何故私の住処にやってきたのか。単に人目を忍んだのか、骸を晒すことを拒んだのか……或いは神としての私に、すがってくれたのか。力無き者が無意識にその神たる力を求めて来たのなら……、だとしたら無力なのは私の方であったのに。他に誰か一人でも、すがることのできる力ある人間はいなかったのか。力など無くともいい、……手を差し伸べたり声をかけたり、そんな心ある者はいなかったのだろうか』
人は山と共に何を削り、川と共に何を埋めて、あの巨大な墓石の群れを造ったのだろう。
『……一人目が死んでからは、早かった……。ひ、ふ、み、よと、人が沈み、やがて私の住処は日常に厭(あ)いた人共の、歪んだ信仰によって異界に祭り上げられてしまった』
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