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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
──曰く、自殺の名所と。
『近付けば引きずり込まれる、幽鬼の類いが出るなどと……人がそれを謳い、信じれば信じるほど、私は私の魂が変わっていくことを感じた。……私は人に、人にこそ害を為す禍津霊であることを望まれたのだ……』
「……」
『……それを悟ってからは、死ぬ者も増えた。拒んでも拒んでも、自分ではどうにも善い方には変われぬ……そのうち私の住処は私のものではなくなった。死ぬ者、生ける者双方の想いがわだかまったそこは穢れに満ち……それ自体が意思を持って人を喰らっていく。……淵に立つまで迷っていた者もある。引き返そうとした者もある。しかし穢れた水は、それを許そうとはしなかった。……私には人の世の理はもう分からぬが、死者も生者も、満たされない何かを別のもので埋めているようだった。
……やがて禍津霊達は私の身をも蝕んでいく。死も間近だった』
「……」
『……そこへ、来たのです。あの夏の日、雨気も蒸した時期の、遅い昼の頃……一人の少女に己の欲望を託した、一人の男が』
「……、……男?」
日嗣はもう、挟む言葉も見付けられない。ただ思い出したように女神を見上げれば、女神は目を伏せるように微かに頷いた。
『近付けば引きずり込まれる、幽鬼の類いが出るなどと……人がそれを謳い、信じれば信じるほど、私は私の魂が変わっていくことを感じた。……私は人に、人にこそ害を為す禍津霊であることを望まれたのだ……』
「……」
『……それを悟ってからは、死ぬ者も増えた。拒んでも拒んでも、自分ではどうにも善い方には変われぬ……そのうち私の住処は私のものではなくなった。死ぬ者、生ける者双方の想いがわだかまったそこは穢れに満ち……それ自体が意思を持って人を喰らっていく。……淵に立つまで迷っていた者もある。引き返そうとした者もある。しかし穢れた水は、それを許そうとはしなかった。……私には人の世の理はもう分からぬが、死者も生者も、満たされない何かを別のもので埋めているようだった。
……やがて禍津霊達は私の身をも蝕んでいく。死も間近だった』
「……」
『……そこへ、来たのです。あの夏の日、雨気も蒸した時期の、遅い昼の頃……一人の少女に己の欲望を託した、一人の男が』
「……、……男?」
日嗣はもう、挟む言葉も見付けられない。ただ思い出したように女神を見上げれば、女神は目を伏せるように微かに頷いた。

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