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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
子龍だったものも神依を見ようとして、けれど寝返りを打つことさえ叶わないのを知ってそのまま続ける。
 『男は何かに迷っているようだった……。しかし結局はいつもと同じように……水に呑まれた』
 ずるずる、ずるずると。
 いつの間にか水面に敷かれた藻の絨毯の、その裂け目から細く濁った光が射し込む。その合間を縫い、どろどろとした形ある水が蠢き男を呑み込んでいく。
 その禍津霊と化してしまった穢れた水の塊には、蛇や蛭の形をしたものもあれば、人の手のように枝分かれしたものもあった。
 それが男の髪や衣をくしゃりくしゃりと掴んで水底に誘う。男の影が濁った光の中黒く浮かび上がり、泡が上に昇っていくのだけ見えた。その水の無い部分だけがとてもとても澄んでいて、ああ、やはり、もう自分は水神ではないのだと泣きたくなった。
 何もせず、何もできず泥の中に残った身を潜めて頭上を眺めていれば、濁った水の暴力に逆らうこともできず、沈んでくる男が見えた。……逆らう気はあったのか無かったのか。藻の無い場所にうっすらと、透けた空に腕を伸ばしたのだけ、……見えた。
 だがその間にも、山ほどの禍津霊が男に群がっていく。お前も同じだろう、と群がっていく。
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