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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 不満、不信、絶望、不安、孤独、貧困、憎悪、悪意、裏切り、悲哀……そんなものしか持てなかったから、ここに来たのだろう、と。
 だけれどお前は間違っていない。他人を苛むことがなかったのだから、お前は間違っていない。心ある理解者はここに在る者だけだと、それらしい慰めを囁いて。
 禍津霊達は男の魂を貪り喰らっていく。
 そうやって池に落ちたものをどんどんどんどん喰らって、肥えて。いつか溢れ出したとき、どうなってしまうのだろう。
 傍らに落ちてきた男はもう事切れていたが、せめて、自分の肉と理性が残る内は弔いの言葉を掛けてやりたかった。
 もう、からっぽでもいい。何も持たなくともいい。それを責める者はいない。だからどうか、喰われても呑まれないでほしい。昏い想いに呑まれ、人を怨むことだけはしないでほしいと。
 『……だが、その日は少し様子が違っていた』
「……」
 ──禍津霊達が、荒びている。
 男の魂を噛み千切っていった禍津霊達が、何かに気付いたように水面を目指して一直線に泳ぎ始めていた。そして、それに倣うように他のものも駆けていく。目には映らぬ水の脈を辿り、我先にと争いながら何処かへと消えていく。
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