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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 ……一体何が起きたのか、分からなかった。
 空っぽになってしまった池には、先程より幾らか白みを帯びた光が射すだけ。ぽっかりと空いた空間は音もせず、静寂に包まれていた。
 それはもう長いこと望んでいた空間だったはずなのに、途端に心細くなったのはどうしてだろう。
 自分が喰われるのだけは嫌だったが、愚かしくも自分の存在を認知してくれるものも未だに欲しくて、残った身だけで泥の中から這い出した。
 『……そして、私は見付けた。男が唯一、その身の内のずっとずっと奥に秘めていたもの。男が息絶える間際まで、護ったもの』
「……」

 本当にあの光の中に神がいるなら──どうかあの子の世界を。
 このありふれた、あの子の世界を、見守って。
 あの神隠しの行く末を、見守って。
 せめてそのどちらかでもが、優しく平穏なものであるように──見守ってやってくれ。
 神様。どうか。
 (……かみさま)

 『……それは虚ろだったはずの男が、最後に遺した魂の欠片だった』
 男は最後に、一人の少女に欲望を託していた。己の人生の終焉が、共にあることを望んでいた。
 なのにたった一本の傘に未練を残していた。そしてここに辿り着くまでに、一つの罪悪感を抱くようになっていたのだ。
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