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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
その洞の空気を満たしているのは、瑞々しい命を誇り咲(わら)う──花の匂いだった。
「──様! 日嗣様っ!?」
「……!」
──と、突如狭い視界の中に黒い影がぬっと現れ、日嗣は丸く目を見開いた。
逆光が形作る、ふわふわの仔猫のような髪。湛えたものを今にも溢しそうな、不穏を帯びた眼差しと不満気な眉が何故か愛らしく、いじらしい。頬に居座る朱印も今となっては喜ばしい気さえしたが、やはりその紅より遥かに純な桜桃の色をした唇が物言いたげにわななけば……日嗣はもう、それを摘まずにはいられなかった。
「神依」
「……っ」
名を呼び、親指で唇をなぞるようにして頬を抱けば、ついに一露の涙がこぼれる。しかし神依はそれを拭うこともせず日嗣の手に自身のものを重ね、じんわりと体温を分かち合うと、安心したように全身の力を抜いた。
「よかった……」
「……何がだ?」
「だって、全然起きてくれなくて……っ、このままだったらどうしようって、私っ……」
「……」
覗きこんでくる顔が愚図る子供のようにくしゃりと歪み、きっと心配してくれていたのだろうと日嗣は苦笑する。
「──様! 日嗣様っ!?」
「……!」
──と、突如狭い視界の中に黒い影がぬっと現れ、日嗣は丸く目を見開いた。
逆光が形作る、ふわふわの仔猫のような髪。湛えたものを今にも溢しそうな、不穏を帯びた眼差しと不満気な眉が何故か愛らしく、いじらしい。頬に居座る朱印も今となっては喜ばしい気さえしたが、やはりその紅より遥かに純な桜桃の色をした唇が物言いたげにわななけば……日嗣はもう、それを摘まずにはいられなかった。
「神依」
「……っ」
名を呼び、親指で唇をなぞるようにして頬を抱けば、ついに一露の涙がこぼれる。しかし神依はそれを拭うこともせず日嗣の手に自身のものを重ね、じんわりと体温を分かち合うと、安心したように全身の力を抜いた。
「よかった……」
「……何がだ?」
「だって、全然起きてくれなくて……っ、このままだったらどうしようって、私っ……」
「……」
覗きこんでくる顔が愚図る子供のようにくしゃりと歪み、きっと心配してくれていたのだろうと日嗣は苦笑する。

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