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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
 涙を拭う仕草も見えて、今度こそ目一杯に抱擁を交わそうと体を起こせば、そこは日嗣にも見覚えのある、女神の在った花の窟(いわや)だと分かる。
 白の岩肌から流れ出る清らかな水は、内包する水晶を溶かしたかのように清廉で……その豊かな流れは土を潤し、辺りを花群(はなむら)で埋めつくしている。空もないのに明るくて、その何処(いずこ)かから射し込む光はきらきらと瞬き、水と戯れていた。
 「……」
立ち上がって目で壁をぐるりとなぞれば一ヶ所だけ、どこかへ通じていそうな裂け目がある。骨蜘蛛の洞と同じ、ぽっかりと口を開いた貝のような裂け目。その手前には川と細い注連縄があり、異界との境界を示している。
 ──不思議だった。ぐるぐると、同じようなところを廻っている。
 そうして辺りを見回し、足元に並べられていた少ない荷を見付けると、日嗣はそれを拾い上げ神依の元へ向かう。剣を差し、鏡を袖に隠し、鈴と背嚢は神依の元へ。随分と軽くなっている荷に、自分と同じように重ねてきた歩みを想う。
 「神依」
「知らない」
けれども神依はぷいと斜を向いてこちらを見ようともしない。拗ねたふりをしているだけなのは分かっていたが、隣に跪けばやはり。
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