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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
さわりと風が通り、二人の髪先をくすぐる。草花も和やかにそよぎ、耳にも心地好い葉の波音が満ち干きを繰り返す。
野辺の草木から、水辺の花へ。
「……常世の国かもしれないな」
「常世の国?」
「ああ。海の果てや海の底、月の上にあるという、あらゆる富や幸福が満ちる理想郷。或いは……生命が。魂が生まれるという、その根源の世界」
「……」
老いも病も、争いもない世界。それらを知らない、限りなく純なものが誕生する世界。小さな獣の神が穏やかに語ってくれた、母なる世界。
紐を手繰り寄せてその珠を抱けば、未だ温かく在ってくれた。
「本当に、そんな国があったんだ……」
「ああ。お前と一緒なら、……」
「え?」
「いや……何でもない」
「……ふふっ」
見上げれば目を反らしてしまう男に、途中で消された言葉が何だか分かってちょっとだけ言って欲しかったような恥ずかしいような気がしたが──結局、今この瞬間瞬間が楽しくて、笑ってしまう。
体中にむず痒い感覚が広がって、とにかく嬉しくて、楽しい。言葉であっても言葉でなくとも、互いの想いを交わすのがこんなに満たされるものだとは思いもしなかった。
野辺の草木から、水辺の花へ。
「……常世の国かもしれないな」
「常世の国?」
「ああ。海の果てや海の底、月の上にあるという、あらゆる富や幸福が満ちる理想郷。或いは……生命が。魂が生まれるという、その根源の世界」
「……」
老いも病も、争いもない世界。それらを知らない、限りなく純なものが誕生する世界。小さな獣の神が穏やかに語ってくれた、母なる世界。
紐を手繰り寄せてその珠を抱けば、未だ温かく在ってくれた。
「本当に、そんな国があったんだ……」
「ああ。お前と一緒なら、……」
「え?」
「いや……何でもない」
「……ふふっ」
見上げれば目を反らしてしまう男に、途中で消された言葉が何だか分かってちょっとだけ言って欲しかったような恥ずかしいような気がしたが──結局、今この瞬間瞬間が楽しくて、笑ってしまう。
体中にむず痒い感覚が広がって、とにかく嬉しくて、楽しい。言葉であっても言葉でなくとも、互いの想いを交わすのがこんなに満たされるものだとは思いもしなかった。

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