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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
やはり血の巡りを辿るよう、八筋に枝分かれした流水の紋。おそるおそる触れてみれば、体の奥で何かが脈々と流れ、息づいているような気がした。
心を交わした神から授かる、その神の息吹。あの強大な龍神の力の片鱗が自分の中に宿っているという実感はそれ以上湧かなかったが、それでも神依は日嗣と新しい約束を交わした。日嗣に取って最も佳き日……来(きた)る日、来るべき時が訪れるまで、巫女としてその鉄(くろがね)の御霊に濃き酒を捧げ、和(にこ)やかに花の褥に眠らせますと。
【4】
やがて海の向こうから雲が湧きいでて日も翳(かげ)り、空は午後の遅い時間の空気を充たし始めた。深く真っ青だった海は傾き始めた太陽の白に色を抜かれ、少しくすんだ色をして、緋に染まる前の中途半端な時間を遣り過ごしている。
気だるい、寝起きの女のような様。
だからか波もやる気なく、力のない水面の上を、これまたゆったりと雲の影が泳いでいた。
神依はそうして世界に同調するように小舟の上でたらりと座り、ずっと海の向こうを眺めていた。春なのか夏なのか判然としない空の下、溶かすでもなく、最後の一つとなってしまった桃色の飴を頬に留めて、時折思い出したかのように舌に転がして。
心を交わした神から授かる、その神の息吹。あの強大な龍神の力の片鱗が自分の中に宿っているという実感はそれ以上湧かなかったが、それでも神依は日嗣と新しい約束を交わした。日嗣に取って最も佳き日……来(きた)る日、来るべき時が訪れるまで、巫女としてその鉄(くろがね)の御霊に濃き酒を捧げ、和(にこ)やかに花の褥に眠らせますと。
【4】
やがて海の向こうから雲が湧きいでて日も翳(かげ)り、空は午後の遅い時間の空気を充たし始めた。深く真っ青だった海は傾き始めた太陽の白に色を抜かれ、少しくすんだ色をして、緋に染まる前の中途半端な時間を遣り過ごしている。
気だるい、寝起きの女のような様。
だからか波もやる気なく、力のない水面の上を、これまたゆったりと雲の影が泳いでいた。
神依はそうして世界に同調するように小舟の上でたらりと座り、ずっと海の向こうを眺めていた。春なのか夏なのか判然としない空の下、溶かすでもなく、最後の一つとなってしまった桃色の飴を頬に留めて、時折思い出したかのように舌に転がして。

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