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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第4章 底にあるもの
 「洞主様は、たまい様というお名前なんですね」
「ああ──それより、大弟は何か粗相はしておらぬだろうか」
「おおと?」
「ああ、そうか。これも昔の癖でな──」
大兄の視線が禊に動き、神依は小首を傾ける。
「それは昔、俺の弟分だった。だがあの頃からあまのじゃくで、可愛いげが無くてな。一周回っていっそ可愛く見える坊主だったんだが……いかんせん、巫女から嫌われ易くてな」
「そうだったんですか……きっと、意地悪だから。でもほんとは、その分違うところで優しいです」
「ほう──そうか、これが優しいか」
「……そういう話は本人のいない所でなさって頂けませんか」
二人のやり取りに、禊はやり過ごすこともできずつい口を挟んでしまう。
 だが少女はそれがなんとなく嬉しくて、頬を緩めた。
 何だか、あの無愛想な禊が大兄の前では少し気を緩めているようにも見えるのだ。大兄も何の気兼ねもなく禊に接し、そう、多分──今の禊と童のような関係なのだと思う。その性格はほとんど真逆だが、それも返って良いのかもしれない。
 禊はきっと誤解され易いし、その忠誠心も危うい気がしていたが……自分以外に理解者がいるなら、大丈夫な気がした。本当に、安心した。
 「さて──」
そしてその柔らかな空気を断ち切るように、意図的に張った声で洞主が少女に告げる。
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