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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
何かに耐えるように小さく震え、淡い紅に染まる体も、涙を浮かべる瞳、薄く開かれた肉厚の唇も──横たわる女の全てが甘く煮詰められた水蜜桃の照りと潤みを湛え、空気までもその芳香で満たして男を誘(いざな)っている。その身の美味いところを焦らすように選んで、摘まんで、一人占めにして食んでやりたいと思ったが、女だって本当はそれを望んでいるのだと唆(そそのか)してくる。
 数多の男神や人々がこの巫女に向けた淫虐の欲がどんなものだったのか、今なら確かに日嗣にも理解できた。
 年相応に無自覚な純心と淫欲、少女と女と──あらゆる端境(はざかい)に在って揺らいでいたこの娘はひどく魅惑的で、その短い時の美しさ儚さを儘(まま)、好色な男共に磨き抜かれて、今、目の前に捧げられている。否──それを自分が、今度こそ勝ち取った。
「……」
日嗣はふと笑むと、顔を隠す手を取り、そっと横に置いてやる。
 その再び明るさを取り戻した視界に映る男の貌(かお)は、蒸した雨天の朧の夜に、月を浮かべたようにしっとりと熱っぽくあって、神依は堪らずきゅうと甘く身をすくませた。
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