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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第23章 天地開闢
「やっ……待って、背中は」
「大丈夫だ。……怖がらなくていい」
その脱力した衣を掴まれ、神依は慌てて体を起こそうと小舟の梁に腕を伸ばす。
背中だけは見られたくない──。
しかし日嗣はその手を取ると、まるで親が子にするように袖から腕を抜いて、下へ下へと衣を下ろしていった。
この白妙は、心も体も熟れた果肉を守る厚い皮。その全てを剥いて、生身の女を愛したい──。
けれどもその皮を剥いたとき目の前に現れたのは──確かに一度思い描いた、散った紅の花や、その朽ちかけた花弁の色を透かした──雪白の背だった。斑に落ちて、無垢を犯す。
日の光の下ではいっそう鮮やかに、春先の雪解けとぬかるみとを混ぜたようなその肌に、自然と日嗣の唇から息が漏れた。
「ああ……」
「み……見ないで」
梁にすがって顔を隠す女に罪悪感を得ないではなかったが、それでも──日嗣はどうしても、見ずにはいられなかった。
素戔鳴に連れ去られる間際に目にした女の姿と、わずかな時間で耳にした惨劇の話。この細い背に負い、炙られたものが何だったのか、全てを受け止めてやりたかった。始父とは違う。過ちを犯した、幼く傲慢だった頃の自分とは違う。けれどそれら全てを受け入れ、昇華してくれたのはこの女だった。
「大丈夫だ。……怖がらなくていい」
その脱力した衣を掴まれ、神依は慌てて体を起こそうと小舟の梁に腕を伸ばす。
背中だけは見られたくない──。
しかし日嗣はその手を取ると、まるで親が子にするように袖から腕を抜いて、下へ下へと衣を下ろしていった。
この白妙は、心も体も熟れた果肉を守る厚い皮。その全てを剥いて、生身の女を愛したい──。
けれどもその皮を剥いたとき目の前に現れたのは──確かに一度思い描いた、散った紅の花や、その朽ちかけた花弁の色を透かした──雪白の背だった。斑に落ちて、無垢を犯す。
日の光の下ではいっそう鮮やかに、春先の雪解けとぬかるみとを混ぜたようなその肌に、自然と日嗣の唇から息が漏れた。
「ああ……」
「み……見ないで」
梁にすがって顔を隠す女に罪悪感を得ないではなかったが、それでも──日嗣はどうしても、見ずにはいられなかった。
素戔鳴に連れ去られる間際に目にした女の姿と、わずかな時間で耳にした惨劇の話。この細い背に負い、炙られたものが何だったのか、全てを受け止めてやりたかった。始父とは違う。過ちを犯した、幼く傲慢だった頃の自分とは違う。けれどそれら全てを受け入れ、昇華してくれたのはこの女だった。

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