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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
「……それで」
茶を飲み干した猿彦は、湯呑みを盆に返しがてら体ごと禊に向き合う。
「チビはどうするんだ。片目はもう……完全に見えてねえんだろ。玉造りは危なっかしくねえか」
話しながら残った菓子を差し出され、禊は深々と頭を下げてその意ごと頂戴する。禊と童の生活は以前と変わらず質素にあって、弟分も未だに甘い実や菓子を珍しがって喜んだ。
「勾玉は……やはり、造れなかったそうです」
それに猿彦は、喉の奥でああと唸る。
「神依様の玉の緒は、こちらにお戻りになった時にはもうありませんでした……。神依様の身代わりとなって黄泉国に掠め取られたか、こちらの世界にはもう必要のないものであったのか……ともかくそれでもう一度、あれも、試みたそうなのです」
「……」
「ですが石を取るにも空を掴み、磨くにも指を削りかけたそうで……師は、研磨を禁じたそうです」
……そしてそれを知った主はひどく悲しみ、泣きながら何度も何度も童に謝罪した。
あの痛ましい記憶をほとんど持たない主に、禊と童が敢えて何かを語ることはなかったが──それでも主は何かを覚り、自分のせいで大切な子の才能が潰えてしまったと自責したのだ。
茶を飲み干した猿彦は、湯呑みを盆に返しがてら体ごと禊に向き合う。
「チビはどうするんだ。片目はもう……完全に見えてねえんだろ。玉造りは危なっかしくねえか」
話しながら残った菓子を差し出され、禊は深々と頭を下げてその意ごと頂戴する。禊と童の生活は以前と変わらず質素にあって、弟分も未だに甘い実や菓子を珍しがって喜んだ。
「勾玉は……やはり、造れなかったそうです」
それに猿彦は、喉の奥でああと唸る。
「神依様の玉の緒は、こちらにお戻りになった時にはもうありませんでした……。神依様の身代わりとなって黄泉国に掠め取られたか、こちらの世界にはもう必要のないものであったのか……ともかくそれでもう一度、あれも、試みたそうなのです」
「……」
「ですが石を取るにも空を掴み、磨くにも指を削りかけたそうで……師は、研磨を禁じたそうです」
……そしてそれを知った主はひどく悲しみ、泣きながら何度も何度も童に謝罪した。
あの痛ましい記憶をほとんど持たない主に、禊と童が敢えて何かを語ることはなかったが──それでも主は何かを覚り、自分のせいで大切な子の才能が潰えてしまったと自責したのだ。

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