この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
しかし、それでも──童は笑った。
童は自身の主が無事戻ったことを素直に喜んだし、自身の夢だってまだ諦めてはいなかった。時間はあるのだから、もう一度一からやり直せばいいと堂々と宣い、その言葉通り勾玉を磨いてみせたのだ。
材料は、主が消える前に残した蝋石(ろうせき)と紙やすり。
今、主の首にはその傷付きやすい柔らかな勾玉が下がっている。
「……けれどこうして甘やかしてくれる方も、殊更厳しく律してくれる方も、一ノ弟はその両方を持っている。本当に幸いなことです。加えてあれにはまだ、片方の目が残っておりますので。その道を行くに、今しばらくは慣れぬ不自由に惑い、躓くこともありましょうが……どうか願わくは、道開きの神の御加護を」
「あーあー……ったく。お前も相変わらず……なんだかんだ、優しい奴だよな」
呆れたような口調で、けれども互いに笑い合う二人の元に、だからひねくれ者のあまのじゃくで、損ばかりしてるの、と奥から声が聞こえてくる。
声の主はぱたぱたと忙しなく駆けており、姿を見せない。本来神に捧げるものは飯も衣も巫覡の手を経らなければならず、まだ慣れない家事に時間を取られているようだった。
それに猿彦はふと性悪な笑みを浮かべると、待ってろよ、と囁く。
童は自身の主が無事戻ったことを素直に喜んだし、自身の夢だってまだ諦めてはいなかった。時間はあるのだから、もう一度一からやり直せばいいと堂々と宣い、その言葉通り勾玉を磨いてみせたのだ。
材料は、主が消える前に残した蝋石(ろうせき)と紙やすり。
今、主の首にはその傷付きやすい柔らかな勾玉が下がっている。
「……けれどこうして甘やかしてくれる方も、殊更厳しく律してくれる方も、一ノ弟はその両方を持っている。本当に幸いなことです。加えてあれにはまだ、片方の目が残っておりますので。その道を行くに、今しばらくは慣れぬ不自由に惑い、躓くこともありましょうが……どうか願わくは、道開きの神の御加護を」
「あーあー……ったく。お前も相変わらず……なんだかんだ、優しい奴だよな」
呆れたような口調で、けれども互いに笑い合う二人の元に、だからひねくれ者のあまのじゃくで、損ばかりしてるの、と奥から声が聞こえてくる。
声の主はぱたぱたと忙しなく駆けており、姿を見せない。本来神に捧げるものは飯も衣も巫覡の手を経らなければならず、まだ慣れない家事に時間を取られているようだった。
それに猿彦はふと性悪な笑みを浮かべると、待ってろよ、と囁く。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


