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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
「──でも兄ちゃんも姉ちゃんも、人前だと恥ずかしがって手も触れないんだ。二人っきりの時は平気でくっついたり恥ずかしいこと言い合ってるのに」
「それはね、童。恥ずかしい思いをするのもそれを人にからかわれるのも、恋ならば存分に楽しいことだからだよ。見せびらかしたいけれど、独り占めにもしたい──欲張りだね」
「……」
悪意なく紡がれた二人の言葉に、日嗣が反論する要素はない。
淡島に戻ったあの日から、とにかく心がそわだって落ち着かなかった。顔を見れば嬉しい気持ちが胸の奥から押し寄せて、名を呼ばれればついつい頬を弛めてしまう。語り合う時間はいつもあっという間に過ぎてしまって、神として無限にも等しい時を持ちながら、その瞬間がもっともっと続けばいいのにと思ってしまう。
それに……寄せ合う頬や体はあの日と同じように温かく、柔らかで。加えて女の肌からはまろやかな香りが匂い立ち、側に寄れば心地好い、まどろみのような感覚に包まれる。それは天花粉の香りに似て、なぜか無性に落ち着いた。
だから今高天原に戻り召し上げてしまっては、きっとそれに惑う男神が現れる。既にその宣言を終えている月読は勿論避けなければならないし、本当は伍名にだってその姿を見せたくない程だった。
「──御令孫?」
「ああ……いや」
「それはね、童。恥ずかしい思いをするのもそれを人にからかわれるのも、恋ならば存分に楽しいことだからだよ。見せびらかしたいけれど、独り占めにもしたい──欲張りだね」
「……」
悪意なく紡がれた二人の言葉に、日嗣が反論する要素はない。
淡島に戻ったあの日から、とにかく心がそわだって落ち着かなかった。顔を見れば嬉しい気持ちが胸の奥から押し寄せて、名を呼ばれればついつい頬を弛めてしまう。語り合う時間はいつもあっという間に過ぎてしまって、神として無限にも等しい時を持ちながら、その瞬間がもっともっと続けばいいのにと思ってしまう。
それに……寄せ合う頬や体はあの日と同じように温かく、柔らかで。加えて女の肌からはまろやかな香りが匂い立ち、側に寄れば心地好い、まどろみのような感覚に包まれる。それは天花粉の香りに似て、なぜか無性に落ち着いた。
だから今高天原に戻り召し上げてしまっては、きっとそれに惑う男神が現れる。既にその宣言を終えている月読は勿論避けなければならないし、本当は伍名にだってその姿を見せたくない程だった。
「──御令孫?」
「ああ……いや」

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