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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
何でもない、と斜を向いてぶっきらぼうに答える青年に、伍名も柔らかく笑む。
「良きお顔をなさるようになりました。……女達もまた、同じです。貴方様がお帰りになってより、降る神々の振る舞いも和やかに、情深くなり……心が浮き足立つようだと申す者もありました。初な小娘でもあるまいに、今更病を患ったようだと」
「そうか。それは……良かった」
「はい。貴方様にこのような話が出来ますことも、真にめでたき慶事にございます。叶うならば今年の神議(かみはかり)には、共に豊葦原のかの地へと、お降りいただきたいのですが──」
「神議……」
それは黄泉に最も近いと言われているかの国で、神々が人と人との縁を結ぶ……現代の豊葦原でも大々的に言祝がれる、数少ない祭典だった。ならば今ばかりは、自分以上に相応しい神はいない。
 いないのだろうが──しかし、
「……すまない」
ややあって、日嗣は緩く頭を横に振った。
「俺はまだ病み上がりだ。遠慮する」
「で、あらせられますか……、残念です」
そう言いつつさして残念に思わないのは、伍名自身どこかで承知していたからだろう。黄泉国で常闇の孤独を味わったこの神は、まだそれを恐れている。共に帰った男と女は、唯一その点を違えていた。
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