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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 「……根の国は、やはり日嗣ぎの皇子には相容れぬ場でありましたか」
「……」
問えば、その皇子は笑みを潜めふと黙す。
「……あの子は、恐れる旅路ではなかったと語ってくれました。それどころか、かの地の土に着く懐かしき縁(えにし)までも見出だし、再びこの身に結わえてくれた」
「……」
「原初の女神と語らい義父上を慕い、また根底の神々に愛されたあの子は、確かにかの国の新たな神語りを紡ぐ、稀なる幽宮(ゆうきゅう)の姫巫女たりえたかもしれない。けれどそれでも……泥の大蛇を前にした時、貴方様が死ぬことだけは受け入れられなかったと……やはり怖かったと申しておりました。それまで母の腕のように、揺りかごのように自分の中に在った死が、とてつもなく恐ろしいものであるように感じたと……けれどそれは、自分の魂がもう女神の元を離れ、何か別のものになってしまっていたからかもしれないと、……少し寂しげでもありましたが、笑んで、語ってくれましたよ」
「……そう、か」
 笑っていた、か。
 それなら少し、理解できるかもしれない……と、日嗣の脳裏に浮かんだのは、やはり寂しげな女の笑みだった。
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