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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
その、外見からはいやにませた台詞で男女の機微を語り神を手玉に取る子供に、伍名も今度こそ本物の笑みを溢す。成程、今目の前に在るのは間違いなく、神も人も新世(あらたよ)を得た、その証のような光景──。
 「──おや」
不意にそこへ、自身も覚えのある小さな神がひょこりと姿を見せた。
「あ、兎神様」
薄桃の毛は艶やかに揃い、もう昔の痛々しい面影はない。兎神は三人の姿を認めるとぴょんぴょんと跳ね来て、ちょこんと童の隣に並んだ。そしてそれを追うように、水底に白銀の鱗が滑る。それは悪戯に水を跳ねさせると、またその長い長い背で悠然と森を縫って、川と空の間を游(およ)いでいった。
 兎神はもう跳び石を恐れず、たまに小島を抜け出してはあの龍の神を訪ねている。龍は兎神から陸(おか)の話を聞き、水底の話を語る。
 また二人が黄泉に消えた後は、淡島の巫覡らの信仰も篤く、斎水分神は改めてこの森の主として奉られてきた。
 日嗣はその我が子とも想う龍神を見送り、また伍名は足元の、幼き獣の神に優しく笑んだ。
 「お前も少し見ぬ間に見違えたね。体も一回り大きくなったかな? このまま何の障りもなく、照る日と清らな水元に在らば、やがて魂(たま)も麗し神になろう。さすれば龍ともなりし住吉の、神の遣いも言祝ごう」
「……!」
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