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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 女の治療を兼ねての奥社通いも日課になっていたが、それ以外にもこなしていかなければならないことが山積みになっている。
 実は朱の楼閣を含め、高天原では斎水分神が破壊した建物の修繕が未だに続いていたのだ。国を造る神々の仕事はあれから特に忙しい。そして夜は、その働きを妻と酒に讃えてもらわなければならなかった。
 (……それに私も、また子が欲しいなあ)
たとえいつか手元から離れていってしまうと知っていても……、それが永劫変わらぬ、自らの幸せ。
 伍名という国津神の長が最も愛した幸せだったが、ついぞ、あの玉を腕に抱くことは叶わなかった。あの雅やかな衣を、無垢に抜くことはできなかった。あの男もまた、神に勝(まさ)っていたのだ。
 (──ならば私も神として、それに敬意をもって報い続けよう)
円と結ばれた若き男神と巫女、そして円ならずとも一つの幸福を得た男と女と──その二組の妹背を、以後いついかなる時も伍名が見下げ、見捨てることはしなかった。
 あの惨劇の日にそれを託した日嗣ぎの皇子も、色硝子の杯をそっと海に戻した巫女も、公には口にしなかったが──二人は先の世まで長きに渡ってその男女の幸せを静かに望み、伍名はそれを叶え続けていった。
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