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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
下を覗いていたことを揶揄するように言われて、天照は慌てて月読に向き直る。
「それより、お前がこんな時間にわらわを呼び出すとは何事ぞ」
「なに……別段、大した用事でもないのですが」
頬をふくらませて拗ねる姉に月読は薄く笑むと、無造作に数回、舌を鳴らしてみせた。
 猫でもいたのか──天照が怪訝そうに辺りを窺っていると、何か細長いものがちょろちょろっと柱を伝い駆け降りてくる。そしてそれは月読の足先までやって来ると、命を待つ猟犬のようにしかと顔を上げて控え、二人を見つめた。
 「な──」
──そのあまりに予想外なものの登場に、天照も思わず息を呑む。
 印象的な真黒い瞳。蜥蜴を思わす細長い胴や足と、すらりとしたすすきのような尾。けれどその体には、光の加減によって瑠璃や翡翠の色を宿す、薄い淡黄の鱗が張られている。
 その姿は、間違いなく──。
 「どういうことじゃ──何ゆえこやつがここに在って、お前に従(したご)うておるのじゃ」
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