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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
「……それは以前、下で祭られた龍と共に捕らえられて持ち込まれた蛟です……。私の宮の奥の森にて、流水に浸けてあったのを思い出し探してみたところ……穢れも禊がれていたようなので、再び捕らえてしつけ直しました」
「そうか……可哀想に」
こうなるまで、一体どんな仕打ちを受けたのか──
「──いや今はそういう話ではない。それを何故わらわに見せる必要があるのじゃ。八衢はあの猿の領域。そんなもの、また持たせて海に放つよう下してやればよかろう」
「勿論、それは仰る通りなのですが……ただ」
「?」
「先だって、姉上が『あの娘』に散々な目に遭わされたと小耳に挟みましたので」
「……!」
人払いは万全にしていたはず。それを何故弟が知っているのか、天照はかあっと顔を上気させてわなわなと震えた。
 ──違う。無意味とは知りつつそれを訴えたかったが、何を言っても底意地の悪い返事をされそうで、天照はやっとやっとそれを堪える。実は太陽の神ということで誤解されがちだが、“常の”天照は三柱の姉弟の中で一番、臆病でまともだった。
 ──だからこそ、密やかに神依を召し出し謝罪もしたのだ。
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