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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 射竦められている?
(わらわが……いや)
それを表に出さない術も心得ていたが、だからといって何も感じていないわけではない。
 思えば、あの日照りの中に在ったときからその片鱗は見えていた。しかし今目の前に在る娘は更に、一本芯のようなものを強固にしている。
(これはあやつが──素戔鳴が仕込んだのか。それとも……)
やはり、変わったのだろうか。馬鹿者の孫がそうであったように、この娘も。
 「……ならばお前は、わらわにどうせよと言うのじゃ」
天照はその重い空気を振り払うよう、分かりやすく大仰に息を吐く。
「日嗣が淡島の──あのお前の家に在るを許したはわらわぞ。暫しの猶予とはいえ、神も人も長き世じゃ。その一時を恋しゅう者同士過ごせるのだから、不満はなかろう。他に不足があれば、物でも金でも望みのものを与えてやる。それともわらわが直々に降り、新たな屋敷神を祭れば良いのか? ならば……っ!?」
と、そこまで語ったとき、それまで静かに座していた娘が不意に立ち上がり、つかつかと歩み寄って天照の前に立ちはだかった。
 普段なら、無礼なと一喝して下がらせることもできたはずだった。しかし薄闇の中、光の粒を宿した瞳だけが印象的で……反射的に、ぶたれると思った。
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