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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 それは、月読が戯れに腕を回してくるのとも異なる。ただ──もし。
 もし母が生きていたなら、こんな風だったのだろうかと……初めて、それを思った。

 「……」
とはいえ日嗣の手前、自分がおいそれと娘の元に降るわけにはいかない。
 日嗣が淡島に留まるを望んだのは、単純に好いた者と共に、ということもあるだろうが……天照がそれを許したのは慈悲だけでもない。いくつかの思惑が重なった上での扱いだった。
 高天原には法がある。神々が自由を謳歌する淡島よりも、遥かに練られた──それに背いたり身勝手をした者はやはり高天原では裁かれるべきだし、神々の世界に黄泉の穢れを持ち込ませるわけにもいかなかった。だから今回は追放という罰を採って、淡島に放しただけだ。時が経ち、禊祓も済んだと判じられれば戻すこともできる。
 また外界からやってきた力ある者をどうするか──それは人間(ひと)に委ねるべき事柄だ。そして今の淡島の住人ならば──と、その網目を潜るような、本音と建前の決断に賛同してくれる神は実のところ──多かった。
 神々は不思議とその身分違いの恋に理解を示し、あるいは満ちて──男も女も若木の如く生き生きとして、再び自らの花を咲かせ実を結ぼうとしている。
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