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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
 次に小波が打ち寄せるような緩やかな水の音が耳に届き、体がふわふわと頼りなく水の中をたゆたっているのが皮膚で分かる。息苦しくはない。まどろみの中にいるような感覚で、気持ちいい。
 (──…お母さんのお腹の中だ)
だから自分は今何も身に付けず、こんなにも安心している。
 覚えているはずもないのにそんなことを思って、ほんの少し目を開いてみれば、水面には光の網が揺れ周囲には光の梯子が垂れていた。そしてどこからか沸く泡だけが、その景色を揺らしている。
(……そういえば今日はお天気雨だった)
少女の、時の失せたぼやけた意識が曖昧に思考する。
 ただ、水が肌を撫でていく度に何か大切なものを無くしていく気がした。忘れたくないのに消えていく、思い出せない夢を描こうとしている時のような感覚。
『……』
それが何であったか既に分からない。消えていくものが無性に惜しくて、何か本当に貴重なものだった気がして、少女はやるせなさから目を伏せた。
 と、その時──
『──ッ!』
何かぬめりとしたモノに足を捕らわれ、少女は弾かれたようにその意識を覚醒させた。
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