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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第2章 神隠しの行く末
 反射的にそちらを見れば、剥き出しの足に──蛇のようなものが巻き付いている。その黒ずんだ皮膚は腫物に犯されているように歪み、そこから太く短い不恰好な手足が生えていた。目は窪み、代わりに眉や喉の辺りが盛り上がり口や顔面をいびつにしている。しかもそれは一匹ではなくて、どこか水底の方から滲み出すようにわいてくる。
 足元に拡がる不気味な光景。
『──いや……っ!!』
叫ぼうとして、しかし口から吐き出されたのは声ではなく空気だった。それまで意識していなかった呼吸が乱れ、途端に苦しくなる。
 その足の生えた蛇は、まるで獲物に群がるようにもがく少女の白い肌を伝った。少女はそれを払いのけようと必死で体をくねらせ四肢をばたつかせるが、何故か波一つ立たず逆に蛇に巻き付かれ囚われてしまう。
 『いや……放してっ! いやぁぁ……っ』
まるで水中に磔にされたように身動きを封じられ、無防備な肌を晒す少女。ぬめり気を帯びた蛇は何かを探るような動きで、産毛を撫でるようにその上を優しく滑った。
 その触れるか触れないかの微妙な感触にぞくぞくとしたものが背筋を走り、体が震え反応してしまう。
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