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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 ……せめてあの子達が無事に生まれなければ、私は妹を慰める優しい姉であれたのに。
 せめてあなたが無事でなければ、私はあなたに代わり孤児(みなしご)達の慈しみ深き母になれたのに。
 子は無事に、“生まれてしまった”。三人の子。
 ──ずぐり。
 そんなことを思う度に、身のうちに巣食う腐った蛇が胴をくねらせ、大口を開けて私の肉を喰らっていく。魂の肉を呑みこんでいく。
 痛い。怖い。見えないそれは、得体の知れない恐怖となって私を苛む。
 溶けてしまいそうだった。
 そしてそのまま根底(ねぞこ)に滲み込み、ぐずぐずとした腐肉の蛇になっていく。私は私でなくなって、意識も心も朽ちていく。
 助けて。誰か──助けて。
 誰にともなくただひたすらにそう乞い願い、幾夜が過ぎたことだろう。

 ──あなたは何故いつも、鏡を見て泣いているのか。

 その声に救われるまで、私は本当に狭く暗い鏡の国、その鏡面からこちらを覗き手招きをする、根の国に囚われていた。

***

 ──もう──もういいのです。気を遣われるだけ、惨めです。自分でも分かっているのです。私は山の神の娘。その辺りに何の益体もなく転がる石と同じ。ただ無骨にごろごろと、山や川に転がる岩と同じなのです。
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