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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
岩や石に、円やかな体や華やかな貌(かお)がございましょうか。だからあの御方も、私を拒んだのです。
──そうか……けれども、その石の隙間から芽は伸びる。その巌に苔がむし、蔓や根が張る。その中には、あなたを彩る花もあるかもしれない。だからきっと、あなたはこれから一番、その身の美しさを増す女神になれる。
 ──いいえ、私は巌の神です。あの子とは違う、花になんてなれない。岩肌は種も根付かぬほどに固くごつごつとして、でなければ高く高く聳え切り立って、生き物を拒むだけ。たとえ花を纏い着飾ったところで、笑い物にされるだけです。だったら山に隠っていた方がまし。他人が言う美しさなど、私には無いのです。
──そうか……けれども人目を忍ぶ石の中には、それはそれは美しい玉を宿すものがある。石はそれを隠して語らず、誇らない。けれども金も銀も、皆その石が含んでいる。だからもしもあなたが私の妻になってくれたなら、きっとあなたは私の宝を沢山その身に宿してくれるだろう。
 ──いいえ──私の中にそんな美しいものはございません。今だって、私はあの子を妬んでいるのです。嫉妬しているのです。なんて愚かしく浅ましい。私は私を拒んだあの方でなく、選ばれた妹に嫉妬している。怨んでいる。呪っている。ただの馬鹿な女です。
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