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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
私が産み出せるものなど、そんな腐肉を含んだ土くれだけ。でなければ雨風に晒されて、外側から朽ちていくだけのつまらぬものです。誰の役にも、何の役にも立たない、必要ともされぬ石。だからもう、関わらないで下さい……私は惨めな女です。汚ならしい女です。私はあなた様には……相応しくないのです……。
──本当に、そう思っているのかい。山にある巌が、どうして無益なものにあろうか。あの清らかな川の流れを作るのも山の巌だ。滴る雨水を貯め、濾過し、私達の渇きを癒すに足る水を降してくれる。それだけじゃない。山の巌には塩を含むものもある。それは海より遠く、山々に囲まれて生きる者達の糧となる。水も塩も、そのどちらもが生命を育むものだ。お前の言う土くれさえ、次代の森を豊かにさせよう。だからもしもあなたが私の妻になってくれたなら、私はきっと、日々土の恵みに肥えて、潤いのある、満たされた暮らしを送ることができるだろう。それに──味のある女性というのは、ただ美しいものより遥かに得難い。
──あ……いえ。私は……えぇと……。えぇと。……あ、味?

***

 「──……」
幸せになることに、罪悪感がなかったわけではない。
 ただ神依が目を覚ました時、夢の中の声がやけに生々しく耳に残っていて……寝起きの、冷えた糊のような思考では、自分が誰だったのかさえ見失ってしまいそうだった。
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