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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 そんな、最初は自分だけのものだった何もかもが、最近は他の巫女に示されてからかわれることも増えてしまった。それは嬉しい反面そわそわとした、何とも幸せな不安も呼び起こすのだ。
 (──やっぱり、気は抜けないっ!)
最もそれは、日嗣と神依お互いがお互いにそう思っているだけの「のろけ」なのだが、本人達に取っては由々しき事態であり、あたふたと慌てふためく様を周囲は微笑ましく、また面白おかしく見守っている。
 そうしてばしゃばしゃと顔を洗いたくった神依が戻る頃には布団も片付けられており、神依は禊に導かれるまま、綺麗にたたまれた巫女装束と襷、化粧道具の脇に腰を下ろした。
 「──……」
視界に入るのは大きなカゴ。ある日突然天より降された龍の子は、まだそのお気に入りのカゴの中で眠っている。
 いつも通り。
 筆や鉢などが並ぶ化粧箱の中には、あの小菊の櫛が収められた薄い桐箱もちゃんと置かれていた。
 「では、始めます」
「うん」
渡された手鏡越しに背後の禊を覗き見れば、柔らかな笑みを湛えている。そして迷うことなく、櫛の入った小箱に手を伸ばした。
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