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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 この流れを紐でくくってしまうのは勿体ない──禊は数日来ずっとそれを告げていたが、主からは日々の生活に不便のないようにと逆に乞われてしまった。炊事に立ち、酒を造り、衣を濯ぎ、糸や布を紡ぎ──共に住まう、神のためだ。
 それは巫女としてとても健やかで、清廉な在り方だったかもしれない。しかし、そのくくられた髪が最も美しい瞬間は夜にこそ。
 そんな現の紐を男神の指先が解いて後、夢の世界に誘(いざな)う時──その甘美な時を二人が少しでも長く味わい、また同じくらい焦れるよう、禊は複雑に紐を交差させ、飾り、結んでいく。
 目をそらすことも許されず、眼差しだけで全身を縫われて。その甘い束縛とは裏腹に、男の指先の感触だけを頼りに少しずつ少しずつ緩められていく紐……その互いの吐息さえ含まされるような時間と距離は、きっとむせかえるように甘く、濃厚なものだろう。
 神はまた、自身が結ぶことを望んでいたようだったが……やはり相応しい役目というものもあるし、禊自身、その一端を手放したくはない気持ちも深く持っていた。
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