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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 「──はい、よろしいですよ。痛みはありませんか」
「うん、ありがとう!」
最後にきゅ、ときつく結び禊が櫛を置けば、主はそんな思惑など露知らず、どんなふうに結んでくれたのかと忙しなく手鏡を動かし始める。
 その姿は相変わらずどこか幼さを残したものだったが、ただ──禊は日毎その姿を見る度に、最上の幸せを感じられるようになっていた。
 記憶の隅にこびりついて離れない、ばらばらと地に落ちる髪、絶望の形。
 だがそうして無惨に引き千切られた髪は今や、少女の背ほどまでに伸びており──それが淡島に戻った途端突然に、ということもあって、不思議なこともあるものだと大いに人々の興味を寄せた。
 最も一番驚いたのは神依本人で、目を覚ました頃は日嗣に倣い自ら断とうとしたほどだ。(それは男神に全力で止められた)
 異界に渡った者が元の世界と「時」を違える話はいくつもあり、どうやらこれもその類いだろうと禊は解釈していたが、一方で主は自分がどれだけの時を黄泉で過ごしていたか実感もなく、むしろ淡島の時の経過の方に驚愕したという。
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