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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 見舞いに訪れてくれた伍名からは、今より更に時を経れば或いは……とも告げられたが、たとえ消えなくとも、主はもう受け入れているようだった。
 戻った二人はよく人目を忍び、仔犬や仔猫がじゃれあうように睦んでいたが、指と声とで背を撫で、その痕さえ絆のように愛でる男神の姿もよく見掛けた。
 交わっている訳ではないが、そんな二人の幸せっぷりは人目を忍んだとて音や香(か)に紛れて顕れる。
 そしてそれを童に指摘されているようでは──猿彦に唆された話も、まだまだ先のことだ。

 髪結いの後は、化粧。
 禊が向かい合って膝を着けば、神依はふと悪戯そうに笑った。
「ねえ禊、私が淡島に来た頃の話覚えてる?」
「はい?」
「私が『可愛くできるの?』って聞いたら、『できません』ってすっごくはっきり言ったの、私覚えてるからね」
「……あの頃とはもう、状況やお立場が異なりますので」
「ふふ。じゃあ、──今日は、可愛くしてね」
「……勿論です」
今度こそ禊が頷けば、神依も安心したように肩の力を抜く。
 禊の指先は、以前と変わらず優しい。そしてその腕には、真新しい紐飾りが巻かれている。
 禊は日嗣に、それを返してほしいとは言わなかった。ただ神依が新たに結べば、禊は何か可笑しそうに笑った。
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