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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
 喧騒から離れて味わう幸せは、夢の片隅に潜む理性にも似ている。ぽっかりとして、なのに心地好い。
 神依は半身に男の熱を感じながら、遠くの、名前も知らない人々の賑わいを眺め、耳を澄ませた。男もきっと同じものを見て、聞いていてくれるはずだ。
 いつかは男の元に集い、互いに護り護られていくもの──。
 その時自分はどうなっているのだろう。こんなふうに二人、皆に温かく迎えられて、春の気配のようにそわそわと、秋の陽気のようにたっぷりと、満たされた心地でいるだろうか。
 (……そう)
……やはり、幸せになることに罪悪感がなかった訳ではない。
 男神と二人、傷付けてしまった女達もたくさんいる。なのに、自分が幸せになることは赦してほしいと思う。その式日を想い描き、夢見ることを、赦してほしいと思う。……そんな小さな棘は、まだ心の中に刺さっている。
 今はそれを望んでくれる女達もいたが、同じくらい、自分も彼女達の幸せを願わなくてはならない。
 男と交わした約束も、忘れてはいない。それは今、自分に取っても向き合わなければならない大切なことだ。
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