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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~
第24章 稲依姫
【6】

 ……そうして一人の少女はやがて、共に恋した男神の妻神として、高天原の神籍に細やかに名を連ねる。
 古びた紙に、墨痕の濃い──
 その記された名を、稲依姫(サヨリヒメ)という。
 その威は主に水神のものであり、他には田畑の豊穣を助ける神とも、養蚕、織物の神とも、縁結びの神ともされた。また黄泉国との関わりから、夜に通じる神とも言われている。いずれにしても、それらは全て穀物神の一面を宿す。
 その新たな神の誕生と婚姻は、淡島、高天原の神も人をも賑やかし、沸き立った神々の魂は再び国を富ませた。
 取り分けその秋の稲穂の実りは高天原から淡島、豊葦原と国の端々まで豊かにして、孫生(ひこばえ)も著しく、二世三世稲孫(ひつち)の実まで肥えていたと語り継がれている。
 彼女の背たる天孫・邇邇芸命もそれを祝い、稲依姫の生まれ故郷でもある道俣淡島に太柱を建て荘厳な御館を顕すと、そこを夫婦が坐すための新たな宮とした。
 天にも続く、斎(ゆ)つ木の宮。
 御殿の前には雲海とも通じ、空と水を宿す大きな池が湛えられていたが、稲依姫を迎えると共に何処(いずこ)かから蓮が伸び、今も群れて見事な花を咲かせている。
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