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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
 それは彼らが創った大地──豊葦原にも。そこでは豊かな水や植物が息づき、鳥や獣が生を育んでいた。もちろん人間も同じ──どこかで生まれてはどこかで生き、どこかで生んではどこかで死んでいく。
『……』
人と神は互いにその姿を認識せずとも常に共に在り、敬いも慈しみも互いにしていた。神を視る人の目は時に歓び時に脅えてはいたが、それは神々も同じだった。
 脆弱な身に宿る強靭な魂。それが人間だった。
 そして──人が自らの手で初めて火を産み出したとき、女神は同じように火の神を生み、その火傷によって数晩を悶え苦しみ、人と同じように命を落とした。


【2】

 「──何故私は、愛しい妻をただ一人の子に変えねばならぬのか」
男神は女神の枕元に這い、すがり、足元に伏しては泣いてその死を悼んだ。その涙からまた神が出づる程に自らの魂を傷付け、削り、哀しみに喉を灼いた。
 女神は埋葬されたが、その後男神は剣を持ち出し、妻の命と引き換えに生まれ出でた我が子を切り捨てた。
 そしてその骸に男神はもはや目もくれることなく──死者が逝くという根底(ねぞこ)の国……“黄泉国”(よみのくに)へと単身、女神を迎えに赴いた。
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