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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
『…………』
少女にはもう、これを視ることに何の意味があるのか分からなかった。体が──その奥にあるものがきしきしと痛むような気がする。それはまるで、灼熱の風に焼かれた地が水を失い、渇き、細いヒビが入っていくような感触だった。
ただ一つ分かったことは、それが男神の……寄り添うものを失った者の悲しみと心細さ……底知れぬ孤独感だったということ。
しかし、死を理解できない幼さが故に──純粋で美し過ぎる、至高で狂気の愛情は剥き出しの刃と同じだった。
少女には、男神の周りに何か黒い粘ついたものが見えた気がした。
***
「愛しき我が妻、私とお前はまだ成すべきことを成していない。私達の国はまだできあがっておらぬだろう。だから共に、現世に帰ろう」
そうして男神は地の底深くにある黄泉国にて、御殿の閉ざされた扉越しに女神に語り掛けた。
女神はそれに応えたが、すぐの帰還は叶わないという。女神は既に黄泉国の食べ物を口にしてしまい、黄泉国の住人となっていたのだ。
それでも女神は男神が訪れてくれたことを喜び、共に元の世界に帰れるよう黄泉国の神に相談してみましょうと、扉の向こうから去っていった。
ただし──絶対に中を覗いてはいけない、と言いつけて。
少女にはもう、これを視ることに何の意味があるのか分からなかった。体が──その奥にあるものがきしきしと痛むような気がする。それはまるで、灼熱の風に焼かれた地が水を失い、渇き、細いヒビが入っていくような感触だった。
ただ一つ分かったことは、それが男神の……寄り添うものを失った者の悲しみと心細さ……底知れぬ孤独感だったということ。
しかし、死を理解できない幼さが故に──純粋で美し過ぎる、至高で狂気の愛情は剥き出しの刃と同じだった。
少女には、男神の周りに何か黒い粘ついたものが見えた気がした。
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「愛しき我が妻、私とお前はまだ成すべきことを成していない。私達の国はまだできあがっておらぬだろう。だから共に、現世に帰ろう」
そうして男神は地の底深くにある黄泉国にて、御殿の閉ざされた扉越しに女神に語り掛けた。
女神はそれに応えたが、すぐの帰還は叶わないという。女神は既に黄泉国の食べ物を口にしてしまい、黄泉国の住人となっていたのだ。
それでも女神は男神が訪れてくれたことを喜び、共に元の世界に帰れるよう黄泉国の神に相談してみましょうと、扉の向こうから去っていった。
ただし──絶対に中を覗いてはいけない、と言いつけて。