この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
そのまま長い刻が経った。
けれど少女にはもう、男神がすることが分かっていた。
『ああ……』
そしてそれは思った通り……程なくして、待ち切れなくなった男神は女神との約束を破って御殿の中に入っていった。
『──やめて……』
ふとそんな言葉が口から漏れる。それは自分の意思だったのか、それとも──ただ生あるものの、女としての懇願だったのか。
どうして分からないのだろう。肉の器のまま地に葬られたらそれがどうなるのか──それは自然の摂理じゃないか。
無垢で美しい男神の目には、それと同じものしか映らないのかもしれなかった。
だが男神が目にした女神は、当然の如く……もはや生者とはかけはなれた、地底の国──“根の国”に相応しい有り様へと変貌を遂げていた。
『──……ッ』
まるで女神の心がそのまま乗り移ったかのように体が一気に熱くなる。恥ずかしくて、悲しくて、どうしていいか分からない。頭の中が真っ白に凍り付いて、それと同時に情けなさで涙が浮かんだ。
男の顔が、空気が、歪む間も無く同じように凍り付いて、それが融解した瞬間には引き潮のように一気に退いていくのも分かった。
二人の間に結ばれていたものが爆ぜ、粉々になって朽ちるのが分かった。
けれど少女にはもう、男神がすることが分かっていた。
『ああ……』
そしてそれは思った通り……程なくして、待ち切れなくなった男神は女神との約束を破って御殿の中に入っていった。
『──やめて……』
ふとそんな言葉が口から漏れる。それは自分の意思だったのか、それとも──ただ生あるものの、女としての懇願だったのか。
どうして分からないのだろう。肉の器のまま地に葬られたらそれがどうなるのか──それは自然の摂理じゃないか。
無垢で美しい男神の目には、それと同じものしか映らないのかもしれなかった。
だが男神が目にした女神は、当然の如く……もはや生者とはかけはなれた、地底の国──“根の国”に相応しい有り様へと変貌を遂げていた。
『──……ッ』
まるで女神の心がそのまま乗り移ったかのように体が一気に熱くなる。恥ずかしくて、悲しくて、どうしていいか分からない。頭の中が真っ白に凍り付いて、それと同時に情けなさで涙が浮かんだ。
男の顔が、空気が、歪む間も無く同じように凍り付いて、それが融解した瞬間には引き潮のように一気に退いていくのも分かった。
二人の間に結ばれていたものが爆ぜ、粉々になって朽ちるのが分かった。