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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
【3】
……ぽちゃん、とひとしずくの水が落ちる音が頭と耳の芯に反響する。
「……。……?」
ふ、と意識が体の中に戻ってきて、少女はゆっくりと目を開いた。それは朝、眠りから覚めたときのような──。
(ここは……)
気付けば少女は穏やかなせせらぎの中、ただ涙を流して呆然としてしゃがみ込んでいた。
一瞬あの美しい緑の川に帰ってきたのかと思ったが、それにしては明るい。いや──遥か地の底に向かって歩いていたにしては、ここは余りにも……美し過ぎるのではないか。
(…………な、に)
視界に映る景色には、なんで、どうして、とそんな言葉しか浮かばない。
まだ醒めない少女の瞳を彩ったのは、あらゆる季節の花々と涼やかに揺れる梢、そして……地底には不似合いな、柔らかい太陽の光だった。
空は見えない。そこはあの自分が引き揚げられた海辺の洞と似た形をしていたが、出入口のような裂け目も無く……なのにお日さまの光は暖かかったし、穏やかな風が髪をさらっては、入り交じる花の香を運んできた。
そしてその四方を囲む透明な石を孕んだ岩壁からは清水が湧き出し、花の小島の隙間を縫いながら少女の浸る小川や池に蕩々と流れ込んでいる。
……ぽちゃん、とひとしずくの水が落ちる音が頭と耳の芯に反響する。
「……。……?」
ふ、と意識が体の中に戻ってきて、少女はゆっくりと目を開いた。それは朝、眠りから覚めたときのような──。
(ここは……)
気付けば少女は穏やかなせせらぎの中、ただ涙を流して呆然としてしゃがみ込んでいた。
一瞬あの美しい緑の川に帰ってきたのかと思ったが、それにしては明るい。いや──遥か地の底に向かって歩いていたにしては、ここは余りにも……美し過ぎるのではないか。
(…………な、に)
視界に映る景色には、なんで、どうして、とそんな言葉しか浮かばない。
まだ醒めない少女の瞳を彩ったのは、あらゆる季節の花々と涼やかに揺れる梢、そして……地底には不似合いな、柔らかい太陽の光だった。
空は見えない。そこはあの自分が引き揚げられた海辺の洞と似た形をしていたが、出入口のような裂け目も無く……なのにお日さまの光は暖かかったし、穏やかな風が髪をさらっては、入り交じる花の香を運んできた。
そしてその四方を囲む透明な石を孕んだ岩壁からは清水が湧き出し、花の小島の隙間を縫いながら少女の浸る小川や池に蕩々と流れ込んでいる。