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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
(……お尻、冷たい)
そこでようやく現実に戻ってきた五感が、その水の感覚をごくごく平凡に少女に伝えてきた。
(禊に怒られちゃうかな)
濡れた分だけ重みを増した裳を引きずるように立ち上がると、きめ細かい白砂が水中でふわっと踊った。それからもう一度ぐるりと周りを見渡せば、視界の端にひらりと白いものが舞い込む。
「……あ」
見上げれば、それはあの縄と紙の飾りだと分かった。更に自分が既にその境界を越えていることに気付き、
「……!」
その背後に何かが“ある”ことを感じ取った少女は、緊張に強張る体と、畏れに膨れ上がる意思を無理矢理に抑えつけ……ゆっくりと……ゆっくりと、後ろを振り返った。
『……お帰りなさい』
「……っ!!」
そしてやはりと言うべきか……そこに在ったのは、一人の女性。
『お帰りなさい……私の子』
自分と瓜二つの女性が、あらゆるものを慈しむような笑みを浮かべ、佇んでいた。
***
「あ……ぁ」
少女は驚愕に目を見開き、意味を成さない言葉を紡ぐ。
そのあまりの驚きと緊張に指一本動かせず、しかしそれ故に視線を反らすことすらできない。
ただ──よく見れば、女性は本当に自分の姿をそのまま写し取っただけのものだと分かった。
そこでようやく現実に戻ってきた五感が、その水の感覚をごくごく平凡に少女に伝えてきた。
(禊に怒られちゃうかな)
濡れた分だけ重みを増した裳を引きずるように立ち上がると、きめ細かい白砂が水中でふわっと踊った。それからもう一度ぐるりと周りを見渡せば、視界の端にひらりと白いものが舞い込む。
「……あ」
見上げれば、それはあの縄と紙の飾りだと分かった。更に自分が既にその境界を越えていることに気付き、
「……!」
その背後に何かが“ある”ことを感じ取った少女は、緊張に強張る体と、畏れに膨れ上がる意思を無理矢理に抑えつけ……ゆっくりと……ゆっくりと、後ろを振り返った。
『……お帰りなさい』
「……っ!!」
そしてやはりと言うべきか……そこに在ったのは、一人の女性。
『お帰りなさい……私の子』
自分と瓜二つの女性が、あらゆるものを慈しむような笑みを浮かべ、佇んでいた。
***
「あ……ぁ」
少女は驚愕に目を見開き、意味を成さない言葉を紡ぐ。
そのあまりの驚きと緊張に指一本動かせず、しかしそれ故に視線を反らすことすらできない。
ただ──よく見れば、女性は本当に自分の姿をそのまま写し取っただけのものだと分かった。