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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
少女の目の前には清らかな水をそのまま固め磨いたような大岩があり、その鏡のような面が表情の異なる少女の姿を薄く映している。岩の奥は暗くて何があるのか見えない。ただ彼女は幻影のようにそこにいて、少女を見つめていた。
いつの間にか握りしめていた手に汗が滲む。
でも、まるで「大丈夫」と親が子をなだめるように風が頬を撫で、髪を揺らしては花の香りを届けてくれて。
少女にはそれら全てがこの女性のような気がして、ほんの少し迷った後に言葉を返した。
「あの……、あなたは。私の子って……じゃあ──」
『……そうよ。あなたはずうっとずうっと遠い私の子。そして私は……あなたのずうっとずうっと遠い母。あらゆるものの母。
高天原の神々も私が生み、今は高天原よりも大きく広い神となって、あなた達を見守っています。……だからあなたのことも、この世界に帰ったときからずうっと知っていたの』
「……お母さん?」
少女が何気なく呟けば、水晶の中の自分は嬉しそうににっこりと笑う。
「……」
少女はゆっくりと砂を踏み、水晶の大岩の前まで進み出た。そのままそっとその岩を撫でれば、本当に水鏡のように波紋が起こる。
いつの間にか握りしめていた手に汗が滲む。
でも、まるで「大丈夫」と親が子をなだめるように風が頬を撫で、髪を揺らしては花の香りを届けてくれて。
少女にはそれら全てがこの女性のような気がして、ほんの少し迷った後に言葉を返した。
「あの……、あなたは。私の子って……じゃあ──」
『……そうよ。あなたはずうっとずうっと遠い私の子。そして私は……あなたのずうっとずうっと遠い母。あらゆるものの母。
高天原の神々も私が生み、今は高天原よりも大きく広い神となって、あなた達を見守っています。……だからあなたのことも、この世界に帰ったときからずうっと知っていたの』
「……お母さん?」
少女が何気なく呟けば、水晶の中の自分は嬉しそうににっこりと笑う。
「……」
少女はゆっくりと砂を踏み、水晶の大岩の前まで進み出た。そのままそっとその岩を撫でれば、本当に水鏡のように波紋が起こる。