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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
けれど……あの父神に取って、美しい母神の姿を汚した死は穢れそのものだった。それは淀となって、連綿と続く流れをせき止めてしまった。
少女が眉を下げれば、水の中の自分は気にしないで、と頭を横に振る。
『あれは私達が、幼かったの。あの方は死が理解できず、私もその先にあるものをまだ知らずにいた。その代償は、お互いを蔑み呪い合う、辛いものになってしまったけど……』
「……」
『だけど私は生まれ変わって、あの方の誓いのおかげで、世界というこの大きな腕(かいな)でたくさんの子を抱き、慈しむことができる』
「じゃあ……今は、寂しくない?」
『もちろん』
「……」
そうして穏やかに笑むもう一人の自分に、少女は不思議な違和感を覚えていた。
どうしてこんなに……優しい顔ができるのだろう。どうしてこんなに、満ち足りた顔ができるのだろう。
ただ姿を貸しているだけ……元は自分の姿のはずなのに。
自分には絶対に作れないような表情を、彼女は本当に自然のままに作ってみせてくれる。
「……強いんだね」
それでようやく少女が笑めば、
『お母さんだもの──』
もう一人の自分は力強く頷いて、それからふと可笑しそうに言葉を続けた。
少女が眉を下げれば、水の中の自分は気にしないで、と頭を横に振る。
『あれは私達が、幼かったの。あの方は死が理解できず、私もその先にあるものをまだ知らずにいた。その代償は、お互いを蔑み呪い合う、辛いものになってしまったけど……』
「……」
『だけど私は生まれ変わって、あの方の誓いのおかげで、世界というこの大きな腕(かいな)でたくさんの子を抱き、慈しむことができる』
「じゃあ……今は、寂しくない?」
『もちろん』
「……」
そうして穏やかに笑むもう一人の自分に、少女は不思議な違和感を覚えていた。
どうしてこんなに……優しい顔ができるのだろう。どうしてこんなに、満ち足りた顔ができるのだろう。
ただ姿を貸しているだけ……元は自分の姿のはずなのに。
自分には絶対に作れないような表情を、彼女は本当に自然のままに作ってみせてくれる。
「……強いんだね」
それでようやく少女が笑めば、
『お母さんだもの──』
もう一人の自分は力強く頷いて、それからふと可笑しそうに言葉を続けた。