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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
 どうしてと言われても、その理由を具体的に答えることはできない。ただ──頭の中に日嗣と肌を重ねた時のことが蘇って、恥ずかしさでいっぱいになってしまったのだ。
 あの時……あの男が自分に何を問い、何を求めたのかは分からない。けれどもそれを越えて、結果的には肌を重ねた。神威の欠片を刻まれた。
 神たる男は本当はそれがどんな意味を持つか、知っていたのだろう。なのに自分は、知らなかったとはいえ、仕方なかったとはいえ……求めてしまった。ゆだねてしまった。
『ふふ──おませさんね』
「ち……違うの」
まるで心の中を見透かしたように紡がれる言葉……母親が小さな娘に使うようなその言葉が何故か無性に恥ずかしくて、もう自分が何を言っても敵わないような気がして、少女は火照った頬を隠すようにうつむき、その熱を冷ますように水の壁に額を付ける。
 すると、今度はそれを慰めるように風が凪いで、少女の頭を優しく撫でてくれた。
『……“みより”』
「…………え?」
その、唐突に自分の中の何かを揺らした言葉に、少女はびくりと肩を震わせ顔を上げる。
 今──のは。
 今のは──何だろう。
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