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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
そこへ岩の上から釣竿を差し出され、少女は何とか水をかき分けてそこまで辿り着き無事に引き揚げられる。
(本当に釣りが趣味だったんだ……)
ただ水を含んだ袖がやけに重い。舌がしょっぱい。帰ったらまたお風呂だ。
 「その衣……、巫女になったんだな」
「あ、はい……」
 頷けば、異形の神は物言いたげに口を開きかけ、止めた。素顔を窺え知れないのになんとなくその感情が伝わってくるのは、その神様の気性のおかげだろう。また心配してくれている。
 (それにしても……)
確かに禊からは、巫女になり縁があれば会えると言われたが……まさかこんな形での再会になるとは思わず、少女は脱力したようにぺたりと座り込む。
(なんか、すっごく疲れた)
この世界は水の中にまで道があるのだろうか。こんなことばかりだ。
 「まあ、少し乾くまでここにいな。それじゃあ色々マズイだろうしな」
「あ──」
そして座るのと同時に釣竿の先端でトンと軽く右肩を叩かれ、その先を見た少女は息を呑んで固まった。そこには、うっすらと透けて見える日嗣に刻まれた朱印──。
 しまった、と思い日嗣を見上げれば、その言い付けを課した当の本人は相変わらず眉をひそめこちらを見ている。
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