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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
「……でも、この子どうすれば」
「さあなぁ。なついてるみたいだし、連れて帰るか?」
「……お水なくても、大丈夫なの?」
割合と適当に返された神の言葉だったが、それを問うように呟けば龍の子はまた肯定を表すように元気に鳴く。
こちらの言うことが分かるのだろうか。口はまだ利けないらしいが……どちらにしても、離れないなら猿彦の言う通りにしても良さそうな気もする。自分が襲われたときのことを考えれば、こんな小さな子が一匹だけでいるというのも少し異に感じるし、迷子かもしれない。
「──それで、嬢ちゃんは本当にどっからここに潜り込んだんだ? ここはもう淡島の外で、ついでにこの辺りは俺のまじないがかかってるとこだから早々来れる場所じゃねえんだけどなぁ」
「あっ……」
そして猿彦のその言葉に我に返った少女は、先程の問いを投げ掛けようと再び口を開きかけるも、寸でのところで洞主の言葉を思い出して止めた。
誰にも語ってはいけない。神にはなお語ってはいけない。語れば、禊や童の人生まで貶めてしまう──。
それで結局上手い言い訳も考え付かず、結論だけを短く伝えることにする。
「さあなぁ。なついてるみたいだし、連れて帰るか?」
「……お水なくても、大丈夫なの?」
割合と適当に返された神の言葉だったが、それを問うように呟けば龍の子はまた肯定を表すように元気に鳴く。
こちらの言うことが分かるのだろうか。口はまだ利けないらしいが……どちらにしても、離れないなら猿彦の言う通りにしても良さそうな気もする。自分が襲われたときのことを考えれば、こんな小さな子が一匹だけでいるというのも少し異に感じるし、迷子かもしれない。
「──それで、嬢ちゃんは本当にどっからここに潜り込んだんだ? ここはもう淡島の外で、ついでにこの辺りは俺のまじないがかかってるとこだから早々来れる場所じゃねえんだけどなぁ」
「あっ……」
そして猿彦のその言葉に我に返った少女は、先程の問いを投げ掛けようと再び口を開きかけるも、寸でのところで洞主の言葉を思い出して止めた。
誰にも語ってはいけない。神にはなお語ってはいけない。語れば、禊や童の人生まで貶めてしまう──。
それで結局上手い言い訳も考え付かず、結論だけを短く伝えることにする。