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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
 愉しそうにわしゃわしゃと頭を撫でてくれる猿彦に、少女はちょっと嬉しくなって笑ってしまう。
(やっぱり道の神様なんだ)
 「──で?」
「で?」
が、そこで投げ掛けられた唐突な問いに、少女はおうむ返しにその意味を問い首を傾げる。猿彦はそれを見て笑うと、「お前の名前だよ」と言葉を続けた。
「貰ったんだろ? 約束したからな、ちゃんと字で覚えてきたか?」
「あ──はい!!」
 それを聞いた少女は破顔して、喜びに声を上げる。
 ──やっぱりこの神様は約束を覚えていてくれた。
 それがすごく嬉しくて、少女は笑みを湛えながら自身の作った水溜まりで指を濡らし、まだ乾いた石の上にその二文字を記した。
 神依。
「みより。私は神依だと……そう呼ばれました」
「……!」
だが、猿彦以上にそれに明らかな反応を示したのが日嗣だった。
「お前──」
「え?」
あの時──別れ際に自身が思ったことを、何故かそのままに語る少女。
 この娘は神々を引き寄せる。自分はそれを以て“神依”とした。しかし──どうして。
 そんな話は誰にもしていないのに、猿彦にさえしていないのに、少女は確かにどこかで誰かにその名を呼ばれた。ならばその“誰か”は、何故それを知っていたのか。
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