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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第5章 いざない
そうでなければ、
“──もう誰にも心を寄せたりはしない”
その言葉通りの生き方は、ひどくやるせないものだった。孤独なものだった。
──神は一人では生きられないのだ。
そしてこの友の手を介して良き伴侶を得、故に縁を結ぶ神威を人から授けられた猿彦には、それは余りにも耐えきれない──やりきれない生だった。
だからたとえその可能性が蜘蛛の糸ほどのものであったとしても、すがりたかった。
「…………」
その思いをかき混ぜるように釣竿で海を混ぜれば、そこに点々と跳び石ができていく。
「──孫ー、行けるぞー。とりあえず奥社の方でいいよなー?」
「……ああ」
その間、特に言葉を交わすことなく、猿彦とも神依とも見えない境界線を引いてはただ待つだけだった日嗣は、その友の声にふと顔を上げる。
ようやく神依を見れば、神依は神依で口をぽかんと開けたまま釣竿で足場を作る猿彦を一心に眺めていた。分かりやすい。
「……今日は立てるだろうな」
「あ、はい……何とか」
声を掛ければ、それは同じように顔を上げ裳の水を絞りながら立ち上がる。運ぶとしても猿彦だったが、あの禊の真似事はせずに済みそうだった。
……しかし、濡れ鼠なのに変わりはない。
“──もう誰にも心を寄せたりはしない”
その言葉通りの生き方は、ひどくやるせないものだった。孤独なものだった。
──神は一人では生きられないのだ。
そしてこの友の手を介して良き伴侶を得、故に縁を結ぶ神威を人から授けられた猿彦には、それは余りにも耐えきれない──やりきれない生だった。
だからたとえその可能性が蜘蛛の糸ほどのものであったとしても、すがりたかった。
「…………」
その思いをかき混ぜるように釣竿で海を混ぜれば、そこに点々と跳び石ができていく。
「──孫ー、行けるぞー。とりあえず奥社の方でいいよなー?」
「……ああ」
その間、特に言葉を交わすことなく、猿彦とも神依とも見えない境界線を引いてはただ待つだけだった日嗣は、その友の声にふと顔を上げる。
ようやく神依を見れば、神依は神依で口をぽかんと開けたまま釣竿で足場を作る猿彦を一心に眺めていた。分かりやすい。
「……今日は立てるだろうな」
「あ、はい……何とか」
声を掛ければ、それは同じように顔を上げ裳の水を絞りながら立ち上がる。運ぶとしても猿彦だったが、あの禊の真似事はせずに済みそうだった。
……しかし、濡れ鼠なのに変わりはない。