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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 ──淡島の巫女の役目。
 「……」
洞主は一つ溜め息を吐(つ)き、先を見つめる。
 ──淡島の巫女は神々に信仰を捧げ、歌舞にてその御霊を慰め……心を寄り添わせては身を捧げ、契りを結ぶ。
(……そう申せば、聞こえはいいが)
 名を貰い、後から別の神にその由来を聞いては素直に喜び、可愛らしく玉や衣をねだった無知な少女はもう居ない。それに媚び、あらゆる神々に身を任せた若い娘はもういない。それを誇り、他の巫女から嫉妬された女はもういない。
 彼らは本当の愛などくれはしなかったのだ。
 そしてその間違った交わりの末に神など生まれようはずもない。そうやって何人もの子を海に流して、娘はやがて変わっていった。
 ……時折響く水滴に、少女が怯えたように手を握り直し、袖間近に身を寄せる。
 (この子もきっといつか、そうなるのだろう……)
洞主はここに来る度にそれを憂い、加えて今手を引く子はもしかしたら自分の子かもしれないと……思う度に切なくて、やるせなくなる。
 そういえばこの子は、まだ無垢であった頃の自分にどこか似ている。彼女の目にはあらゆるものが美しく見えて、優しく見えて、それを受け入れるまま疑いもしない。
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