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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 猿彦を友とし、またあの小さな水霊をも見下げなかった日嗣ならば、或いは……もしかしたら。
 もしかしたら、……その妻神も。
「……」
だがそれを、敢えてか語らない猿彦に問うのも憚られ、ただ待てば猿彦もまた何かに気付いたように言葉を続けた。
 「……やっぱりお前は、良い子だったんだな」
「え?」
「最初に会った時にな。……あの砂浜で孫とちょっと話したんだよ。でなきゃ、孫が自分から巫女を助ける訳もねえ。お前は今頃、奥社のどっかで毎日加持祈祷のまじないを子守唄代わりに、命と体を担保にお寝んねだ」
「え……っ、あ」
神依は無意識に肩に手を伸ばし、身震いする体を抑えるようにそこを握る。
 言われてみれば、助けてもらえなかった時のことなど考えたこともなかった。
 日嗣の“基準”が何であったのかはともかく……、ここでこうしてお喋りできているのは運良くそれに見合うことができたからに過ぎない。
 「あの……あの黒い蛇は、本当はすごく怖いものだと禊から聞きました。穢れも……神様達が一番嫌うものだとも」
「まあ、良かないけどな」
「なのに……猿彦さんや日嗣様は、どうして私を助けてくれたんですか?」
「……あー」
それは禊に問おうにも問えず、また神依がこの二柱の神との再会を願った最初のきっかけ。
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