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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 「……」
そう言って、慈しんでくれるように頭の上でぽんぽんと跳ねる神様の手は、信じられる。
 ならばあの……濡れた髪を退けてくれた優しい指先や声音も、すがる腕を受け入れてくれた背も、記憶の中だけのものではなかったと……信じていいのだろうか。
 神依は少し考え、それからようやく問いに答えるように小さく頷いた。
「まだ少しだけど……怖くは、ちょっとなくなりました」
「だとありがたい。孫のおもり役が増えるのは歓迎だからな」
「そんなこと言って、ほんとはすごく仲良しでしょう?」
 そんな風に、後はこちらに来てからのことを話しながらちびちびと猪口に口を付けていた神依だったが、やがて体中がぽうっとなって、何だかふわふわと気持ちよくなって、眠たくなってきてしまった。
 それに気付いた猿彦が禊と童を呼び、しかし彼らが就寝の支度を済ませる頃には神依は猿彦に寄りかかり、既に夢の世界へと赴いていた。
 「──御無礼、無作法をお詫び申し上げます。何分、今まで酒というものをお求めにならないお方でしたので」
「だろうなあ。知ってるか? 豊葦原じゃ法(のり)で酒が飲める年が決まってるんだぜ」
「……」
主を布団に運び神に謝す禊だったが、その言い様に少し違和感を覚える。
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