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恋いろ神代記~縁離の天孫と神結の巫女~(おしらせあり)
第6章 巫女として
 それを知って飲ませたのなら、おそらくこの神は最初からこの状況を作ることを見込んでいたのだろう。
 それを禊が目で問えば、猿彦はふと……寂しげに笑い、盃を置いた。
「物分かりが良すぎるのも考え物だよな……特にお前ら禊は」
「……主の仕草、口調、視線。あらゆることからその真意を見通すのも禊の役目にございますれば。一ノ弟」
「……はい」
そして既にそれができている禊と童は、その目の動きと呼び掛けだけで意図が通じる。何か話があるのだろうと礼を取り縁に座せば、神は一度深く頷きまず禊を見た。
 「お前──確か昔、今の洞主んとこにいたよな」
「はい」
「まああの主じゃ並みの禊付けとくわけにもいかねえよな。なんせ初っぱなから、孫絡みだ」
「……幸いなことです。それに……此度の主はもはや“そういうもの”なのだと、先程の一件で私も腹が決まりました」
「俺が言いたいのはそういうことじゃねえ。いや……そりゃ内心は“そういうこと”になりゃ良いとは思ってるけどな。……だけど俺は孫の友でもあり、一応神様でもあるからお前らのことも想ってやりたい」
猿彦はまどろっこしい空気を煙たがるように自身の赤頭をかく。
 神にも心がある。だから、神が神らしく在るのは本当に難しい。
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